パクリ騒動のニセ「大江戸温泉物語」は今

2017/08/14 16:13 Written by Narinari.com編集部

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昨年末、中国・上海で日本の「大江戸温泉物語」の名称を勝手に使用し、外観やロゴ、サービスまでもが酷似した温泉施設の存在が明らかになり物議を醸したが、あれから半年以上が過ぎた“いま”はどのような状況なのか。実際に現地を訪問するとともに、「大江戸温泉物語」を運営する大江戸温泉物語株式会社と熊本県に意見を聞いた。



◎中国の地図アプリに表示される「大江戸温泉物語」

問題の「大江戸温泉物語」は上海中心部から少々離れた宝山区にある。地下鉄7号線の「場中路駅」にほど近く、通行人もまばらな少々寂しいエリアだ。同駅1番出口を出ると、すぐ目の前は交差点になっており、左折して200メートルほど歩けば「大江戸温泉物語」の看板が見えてくる。中国の地図アプリ「百度地図」で「大江戸温泉物語」と検索すれば地図上にも表示されるので、アクセスは比較的容易だ。



◎グッズ販売店は「くまモン専門店」

上海の「大江戸温泉物語」の外観はまさに東京・お台場のそれとそっくりで、エントランスホールには浴衣を着たマネキンが数体並べられていた。客が好みのデザインの浴衣を選び着用できるところも、東京の「大江戸温泉物語」と同じだ。

靴をロッカーに預けてからフロントに赴くと、ロッカーキーのリストバンド、タオルが手渡される。リストバンドは施設内で食事や買い物をするときにも利用し、退店時に一括清算するシステム。入館料金は、夏は冬よりも安く設定されており、98元(約1,600円)だった。

フロントから大浴場に向かうロビーには、ゲームや少人数用のカラオケボックス、浴衣の受け渡し所、キッズルームなどがあった。

驚いたのはグッズ販売店で、その商品のほとんどが「くまモン」グッズ。店内には大小さまざまな「くまモン」グッズが所狭しと並べられており、グッズ販売店というよりも“くまモングッズ専門店”と言ったほうがしっくりくる、そんな印象だ。

2階にはレストランやカフェ、休憩室、マッサージルーム、岩盤浴、ゲームコーナーなどがあった。休憩室は小型液晶TV付きのリクライニングシートが並ぶ部屋、畳部屋、大きなクッション&マンガが用意された部屋など数種類あり、館内が空いていたことも影響してかなりゆったりできた。

ゲームコーナーにはクレーンゲームやスノーボードゲームなどのほか、2台のVRマシンを設置。VRコンテンツは5〜6種類あり、すべて無料で体験できる。ただ、お台場の「大江戸温泉物語」で人気の「縁日」コーナーはさすがに見られなかった。「縁日」は同施設における目玉のひとつなので、それを再現できていないのは“パクリ度”マイナスだろう。


◎飲食施設のレベルは「まあまあ」

飲食施設には居酒屋、焼肉屋、ラーメン屋、カフェがあった。焼肉は少々高めの価格設定だったが、定食やラーメンはどれも50元(約800円)前後で、こうした施設としては良心的な価格。上海には美味しい日本料理が食べられるレストランが数多く存在しているため、そうした店と比べるとどうしてもレベルの低さを感じざるを得ないが、注文した2種の「定食」は不味くて食べられないほどではなく、“そこそこ頑張っている”レベルだった。



◎大浴場は広く、お馴染みのアカスリも

大浴場や更衣室は広く、お台場の「大江戸温泉物語」と同等の規模かそれ以上。洗い場に立ったまま浴びるシャワーが多く設置されているのは中国ならではで、日本のように座ってシャワーを浴びる習慣がない中国人客に配慮したものであろう。ちなみに、着席タイプとスタンドタイプのシャワー数はほぼ同数で、その分、 お台場の「大江戸温泉物語」よりも広く感じる。

洗い場には中国人に人気のアカスリマッサージコーナーがあり、中を覗いてみると、パンツ姿の男性が「来!来!来!」と積極的に誘ってくる。慣れていないと「ぎょっ!」とする光景かもしれないが、中国の温泉施設ではアカスリは定番なので、何てことはない。おじさんたちの熱心な勧誘もよくあることだ。

温泉施設には内湯、露天合わせて約10種類あり、それぞれに七福神から取った名前が記されていた。温度は40度程度。ジェットバスなどもあり、予想以上に快適な“お風呂タイム”を過ごすことができた。


◎かなり研究されている印象

今回実際に上海の「大江戸温泉物語」を訪れてみた印象としては、「かなり研究されている」という点に尽きる。正直、中国人が日本の「大江戸温泉物語」を訪れ、視察しただけで再現できるレベルには到底思えない。日本の温泉施設、「大江戸温泉物語」にかなり詳しい人物が関わっている印象で、そういう意味では中国人だけでなく、(事情を知った上でなのかそうでないかは定かではないにせよ)日本人もこの“パクリ”「大江戸温泉物語」のオープンには関わっている――そう確信した次第だ。

また、客の少なさにも驚いた。訪れたのが平日の夕方という影響もあるだろうが、中国では夏場にわざわざ熱い湯に浸かる文化があるわけではない。いくら施設が立派でも、日本のように通年客が訪れるのかと言えば、そうでもないようだ。正直、パクリ云々は別にして、「このまま運営できるのだろうか?」と不安に思えてくる客入りだった。


◎運営会社は「弁護士と協議中」

もっとも気になるのは、同施設と大江戸温泉物語株式会社の間でその後何かしらの取り決めや契約などがあったのかだが、大江戸温泉物語株式会社の担当者は「現在は弁護士と協議中の段階で、適切な方法で対処します」との返答。やはり依然として上海の「大江戸温泉物語」は無許可運営が続いているようで、法的措置の“準備段階”のままだ。

また、くまモンに関してだが、こちらは今回の取材で撮影した写真を熊本県政府国際課に提出して確認を求めたところ、「基本、海外における販売権を得たくまモン商品の陳列・販売は問題ない」とした上で、「施設内の階段に陳列されているくまモン人形に関しては違法である可能性もある」とし、「現地事務所スタッフを派遣し、確認致します」とのことだった。

後日、「現地スタッフの話によれば、階段のくまモンはすでに撤去されました」との報告も受けている。

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