ポップミュージックが、過去50年間で、より陰鬱さを増してきたという。

現在のヒット曲は過去のチャート上位の曲よりも、より多くの悲惨さ、ストレス、感情的な苦痛に満ちているそうだ。
ウィーン大学の研究チームが1973年から2023年までにリリースされビルボードHot100にランクインした約2万曲の歌詞を分析。ポップミュージックの情緒的変遷を明らかにした。
歌詞の中でも「脅威、ネガティブな感情、苦痛、失敗」といったストレス関連の言語表現に焦点が置かれた同研究。ヴィレッジ・ピープルの「Y.M.C.A.」やマイケル・ジャクソンの「マン・イン・ザ・ミラー」といった往年の「気分高揚アンセム」と、ジャスティン・ティンバーレイクの「クライ・ミー・ア・リバー」やナイン・インチ・ネイルズの「ザ・パーフェクト・ドラッグ」といった「怒り、恐怖、悲しみ」の感情を反映した楽曲が比較された。その結果、楽観主義からの離脱が明確に示唆されたかたちだ。
「悪(bad)」「泣く(cry)」「間違い(wrong)」「恋しい(miss)」「殺す(kill)」「傷つける(hurt)」などネガティブな言葉が、半世紀前よりもヒット曲の歌詞に頻出。一方で使われる言葉遣いはより単純で直接的なものになっているという。
同研究を執筆したマウリシオ・マーティンズ教授はこう話す。
「歌詞はよりストレスが多く、よりネガティブで、より単純になっています」
「この発見は、うつ病、不安、ストレスの増加率と一致していて、ニュースや小説におけるネガティブなトーンの増加傾向を反映しています」
うつ病や不安など精神的な健康問題を抱える若者の増加を反映してはいるものの、ポップミュージックが絶望一色になったわけではないとマーティンズ教授は強調。「近年でも、多くの楽曲は陽気で希望に満ち、歌詞も豊かなものが多いです」と続けた。